※本記事は2026年11月時点の一般的な解説です。手続きの期限や条件は変わることがあります。詳細は税務署・市区町村・年金事務所などの公式情報でご確認ください。
「フリーランスになりたいけれど、何から準備すればいいか分からない」「辞めてから慌てたくない」
フリーランスの準備は、退職してからでは遅いものが意外と多いのが特徴です。たとえば、ローンやクレジットカードの申込みは、会社員のうちでないと通りにくくなります。
この記事では、会社員からフリーランスエンジニアになる前にやることを、「時期別」のチェックリストにまとめました。印刷して、上から順に進めてください。
✅ 先に結論:準備は「退職の半年前」から
- 半年〜3か月前:市場価値の確認・手取りの試算・貯金・ローンやカードの申込み
- 3か月〜1か月前:案件の見込み確認・会社への退職の申し出・引き継ぎ
- 退職直後:健康保険・年金の切り替え(期限が短い)
- 開業後:開業届・青色申告承認申請書・会計ソフトの準備
全体のスケジュール
| 時期 | やること |
|---|---|
| 退職の6か月〜3か月前 | スキルの棚卸し/エージェントに相談/手取りの試算/貯金/ローン・カードの申込み |
| 3か月〜1か月前 | 案件の見込みを確認/就業規則の確認/退職の申し出/引き継ぎ |
| 退職時 | 源泉徴収票・年金手帳(基礎年金番号)・健康保険の資格喪失証明書などを受け取る |
| 退職後すぐ(目安:14日以内) | 国民健康保険(または任意継続・扶養)/国民年金の手続き |
| 開業後(目安:1〜2か月以内) | 開業届/青色申告承認申請書/事業用口座・会計ソフト |
① スキルと市場価値の確認
- ☐ 職務経歴を棚卸しする:使える言語・フレームワーク、担当した工程(設計〜運用)、役割、実績を書き出す
- ☐ エージェントに相談する:自分に紹介される案件の条件・単価・年齢や経験の条件を確認する(在職中でも、情報収集の相談ができるサービスは多い)
- ☐ 複数のサービスで比べる:1社だけで判断しない
エージェントの違い(給与保障、対応年齢、リモート案件)は、ITフリーランスエージェントの比較記事にまとめています。
② お金の準備
- ☐ 手取りを試算する:報酬の約6.5割が目安。社会保険・税金込みで、今の生活費を上回るか確認する(手取りの試算記事)
- ☐ 生活費の数か月分以上の貯金を用意する:案件が決まるまでの空白期間や、入金が遅れる期間(月末締め翌月末払いなど)に備える
- ☐ 独立1年目の請求を見込む:住民税と国民健康保険料は前年の所得で計算されるため、独立後に高めの請求が来ることがある
- ☐ 事業用の口座を用意する:プライベートと分けると、経費の管理や確定申告が楽になる
- ☐ 生活費の見直し:固定費(通信費・保険など)を下げられるか確認する
③ 会社員のうちにやること(退職後では遅い)
⚠️ 独立すると、社会的信用の審査が厳しくなる
個人事業主になると、住宅ローン・自動車ローン・クレジットカード・賃貸契約の審査が通りにくくなることがあります。事業を始めたばかりだと、確定申告の実績(数年分)を求められるのが一般的です。
- ☐ クレジットカードを作る・限度額を確認する:事業で使うカードも、在職中に用意する
- ☐ ローンの予定があれば先に済ませる:住宅・車など
- ☐ 賃貸の引っ越し・更新を検討する:予定があれば、独立前に
- ☐ 有給休暇を計画的に使う:退職日までに消化できるよう、引き継ぎと合わせて調整する
- ☐ 会社の制度を確認する:退職金、企業型確定拠出年金(DC)の移換手続きなど
📌 失業手当について
独立して事業を始める場合、雇用保険の失業手当(基本手当)は、原則として受けられません。「しばらく失業手当をもらいながら準備する」という想定の方は、ハローワークで条件を確認してください。
④ 会社との関係を整える
- ☐ 就業規則で、退職の申し出の時期を確認する:多くの会社は「1〜2か月前」などと定めている(法律上は、期間の定めのない雇用なら、申し出から2週間で退職できるのが原則)
- ☐ 競業避止義務・秘密保持の条項を確認する:退職後に、同じ業界・取引先で働くことに制限がないか
- ☐ 業務の引き継ぎ資料を作る:円満退職は、後で仕事が回ってくることにもつながる
- ☐ 退職後の取引の可能性を確認する:古巣から業務委託を受ける場合は、契約形態や条件を明確にする
⑤ 健康保険・年金の切り替え
退職すると、会社の健康保険・厚生年金から外れます。切り替えの手続きは、期限が短いので、退職前に方針を決めておきましょう。
- ☐ 健康保険の選択肢を比べる:国民健康保険/任意継続(退職後20日以内に申請・最長2年)/国民健康保険組合/家族の扶養
- ☐ 国民健康保険の保険料を試算する:市区町村の窓口やウェブの試算で確認する
- ☐ 国民年金への切り替え:退職日の翌日から14日以内が目安(市区町村の窓口)
- ☐ 必要書類を受け取る:健康保険の資格喪失証明書、年金手帳または基礎年金番号がわかるもの
- ☐ 老後の備えを検討する:付加年金、国民年金基金、iDeCo、小規模企業共済
保険料や年金の金額、選択肢の比較は、手取りの試算記事で詳しく解説しています。
⑥ 開業の手続き(税務署)
- ☐ 開業届(個人事業の開業・廃業等届出書):事業を始めてから1か月以内が目安
- ☐ 青色申告承認申請書:新たに開業する場合は、開業日から2か月以内が目安。最大65万円の特別控除を受けるために必要(65万円の控除には、e-Taxでの申告などの要件あり)
- ☐ 屋号を決める:必須ではないが、事業用口座の名義などに使える
- ☐ 会計ソフトを選ぶ:最初から帳簿をつける仕組みを作る(Taxnapを使ってみた記事も参考に)
- ☐ インボイス登録するか判断する:登録すると課税事業者になる。2割特例は2026年分で終了し、2027〜2028年分は3割特例(要件あり)になる
※年の途中で退職した場合、年末調整を受けられないため、確定申告が必要です(会社員時代の給与分と合算して申告します)。会社から受け取る源泉徴収票は、必ず保管しておきましょう。
⑦ 契約・案件の確認
案件を決める前に、契約書(または取引条件の明示書面)で、次の項目を確認します。
- ☐ 契約の種類:準委任・請負など(成果物の責任の範囲が変わる)
- ☐ 業務内容・稼働条件:稼働日数・時間、リモートの可否、勤務地
- ☐ 報酬額・精算条件:月額、時間精算の幅、支払期日(締め日・支払日)
- ☐ 契約期間・更新・中途解約の条件
- ☐ 秘密保持・損害賠償・知的財産権の取り扱い
2024年11月に施行された「フリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス新法)」では、発注側に取引条件の明示や、報酬の原則60日以内の支払いなどが義務づけられています。トラブルの回避策は、ITフリーランスはやめとけ?失敗しやすいパターンと回避策で解説しています。
⑧ 独立後の「仕組み」を整える
- ☐ 請求書の発行・入金管理のルールを決める
- ☐ 経費の記録方法を決める:レシート・領収書の保管、プライベートとの区別
- ☐ 納税のためのお金を別に確保する:所得税・住民税・国保の支払いに備え、報酬の一部を別口座に分けておく
- ☐ 病気・ケガへの備えを検討する:就業不能保険、労災保険の特別加入制度(対象・手続きは厚生労働省や加入団体で確認)
- ☐ 学習の時間と予算を確保する
- ☐ 税理士に相談するかを決める:最初の年だけでも、相談しておくと安心
⑨ 家族・生活の確認
- ☐ 家族に説明し、理解を得る:収入の波、保険や年金の変化を共有する
- ☐ 生活費・保険(生命保険・医療保険など)を見直す
- ☐ 万一うまくいかなかった場合の選択肢を決めておく:期限(例:○か月案件が決まらなければ転職活動に切り替える)を、先に決めておく
よくある質問(Q&A)
Q. 在職中に、開業届を出してもいい?
開業届自体は出せますが、会社の就業規則で副業が禁止・届出制になっていないか、先に確認してください。また、住民税の納め方などで、会社に知られる場合があります。副業の扱いは副業と所得証明書の記事も参考にしてください。
Q. 開業届を出さないと、フリーランスとして働けない?
開業届を出さなくても、仕事を受けること自体はできます。ただし、青色申告の65万円控除を受けるには、開業届と青色申告承認申請書が必要です。収入があれば、届出の有無にかかわらず、確定申告は必要です。
Q. いつ退職するのがいい?
目安は、案件の参画時期が見えてからです。退職日と参画日の空白が長くなると、貯金を取り崩す期間が増えます。ボーナスの支給日や、有給の消化も考えて決めましょう。
Q. 準備にどれくらい時間がかかる?
最短でも、退職の3〜6か月前から動き出すと余裕があります。貯金やローンの手続き、エージェントとの面談に時間がかかるためです。
まとめ:チェックリストの「最初の1項目」から始めよう
- 準備は、退職の半年〜3か月前から始める
- ローン・カードの申込みなど、会社員のうちにやることを先に済ませる
- 退職後は、国保・国民年金の切り替え(14日以内が目安)を最優先に
- 開業届と青色申告承認申請書で、65万円の控除を受けられるようにする
- 案件を決める前に、契約書の項目を必ず確認する
最初の一歩として、エージェントに相談して、自分の市場価値と案件の条件を確認することをおすすめします。ここが分かれば、貯金の目標や、退職のタイミングも決めやすくなります。
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